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標的タンパク質分解

標的タンパク質分解のためにPROTAC®(緑色)が標的(黄色)およびE3ユビキチン(ピンク色)に結合する結晶構造3Dモデル。

標的タンパク質分解(TPD)は、細胞内に備わるタンパク質分解プロセスを低分子を使ってハイジャックすることにより、疾患の原因となるタンパク質を細胞から排除するという新しい創薬モダリティです。ユビキチン-プロテアソームシステムは、E3ユビキチンリガーゼを利用した細胞内のタンパク質品質管理メカニズムであり、損傷を受けたタンパク質やミスフォールドしたタンパク質をプロテアソーム分解へと誘導します。タンパク質分解誘導キメラ化合物(PROTAC®)は、疾患ターゲットへのリガンド化合物とE3リガーゼリガンドをリンカーで繋いだ二官能化合物です。 

細胞に添加すると、標的タンパク質をE3リガーゼに強制的にリクルートし、本来備わる分解経路に乗せて疾患原因タンパク質を除去します。このタンパク質ノックダウン手法は、CRISPRに相当する化学的手法として注目されており、低分子化合物で制御可能なことから、幅広いフェノタイプを提供します。 



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標的のPROTAC®化合物による分解は、低分子による従来の阻害剤によるアプローチに比べて多くの利点が存在します。リード化合物、薬剤部位、阻害剤から開発された分解誘導化合物は、細胞応答やターゲット選択性が向上します。分解誘導化合物は標的とともに排除されることがないため、触媒的に作用し続け、少量の投与で効果が持続します。現在、タンパク質のターゲットの約80%は結合部位や活性部位が明確にならないために、従来の低分子化合物では創薬アプローチが困難(アンドラッガブル)とされていました。一方で、低親和性化合物を活用し分解誘導化合物を準備すれば、多様なターゲットタンパク質をE3リガーゼにリクルートし、分解誘導医薬品の開発が進む可能性が期待されます。このような理由から、タンパク質分解誘導による手法は、新たな創薬モダリティとして注目されており、研究ツールとして将来性が期待されています。

タンパク質分解誘導化合物は、標的タンパク質およびE3リガーゼの両方と同時に作用するため、その設計は簡単ではありません。標的タンパク質の分解をスクリーニングする目的で PROTAC®ライブラリを生成する際には、モジュール式のアプローチがよく用いられます。そのためには、E3リガンド、標的タンパク質リガンド、リンカーを戦略的に組合せて合成し、リンカーの特性などを網羅的に調査することが重要です。標的に対して特異的分解誘導化合物ライブラリを活用し、細胞内の標的タンパク質の排除について分析することで、さらなる構造最適化と作用の特性化のためのリード化合物情報を提供します。

PROTAC® はArvinas Operations, Inc.の登録商標であり、ライセンス契約の下で使用されています。

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