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細胞培養ラボ用設備

ECACC Laboratory Handbook 4th Edition

ラボの設計

おそらく、組織培養において最も過小評価されている側面のひとつは、良質な試料を安全かつ効率的に作製するに当たり、適切に施設を設計する必要があるということでしょう。ほとんどの組織培養は、培養用のラボにおいて、理想的ではない条件下で実施されています。しかし、いくつかの基本的なガイドラインに従えば、そのような問題を回避することができます。

優れた組織培養設備を設計するに当たり、いくつかのポイントがあります。作業は、可能であれば、新たに受領した試料を取り扱うために確保された区域(検疫区域)と汚染物質がないことが確認された試料のための区域(メインの組織培養設備)に分かれた、専用設備で実施することが理想的です。これが不可能な場合は、汚染のない試料に対して行うすべての操作を、「検疫」試料に関わる操作の前に完了させるよう、時間を分けて作業を行う必要があります。別々のインキュベーターを割り当てる必要もあります。また、作業の合間に、作業面を十分に洗浄し、消毒する必要があります。

ラボの設計

すべての新たな試料は、細菌、真菌、特にマイコプラズマなどの汚染物質がないことが確認されるまで、「検疫」試料として取り扱わなくてはなりません。共用施設で組織培養を実施するには十分な計画が必要であり、汚染リスクを最小限に抑えるために、常に適切な無菌操作を行うことが不可欠です。

ほとんどの細胞株では、危険病原体諮問委員会(ACDP)ガイドライン(ACDP、1995)†に基づき、ラボを少なくともBSL2/カテゴリー2に指定する必要があります。しかし、必要とされる正確なカテゴリーは、細胞株および提案される作業の性質に依存します。このガイドラインには、照明、暖房、作業面の種類、床材、手洗い設備の設置などのラボ環境に関する推奨事項が記載されています。さらに、ラボ内のリスクを封じ込めるために、ラボ外に対してラボ内は陰圧の空気圧で運用することが推奨されます。† (1995) Categorization of Biological Agents According to Hazard and Categories of Containment, 4th

細胞培養用のバイオセーフティキャビネット

バイオセーフティキャビネット(層流フード)は、細胞培養の最も重要な設備であると考えられます。正しく操作すれば、製品にクリーンな作業環境を提供すると同時に、作業者をエアロゾルから保護できるためです。これらのキャビネットでは、HEPAフィルター(高性能微粒子フィルター)を使用して、作業者と製品を保護しています。提供される封じ込めレベルは、使用するキャビネットのクラスによって異なります。キャビネットから大気中に放出することもできますし、2枚目のHEPAフィルターを通して再循環させてから大気中に放出することもできます(図1)。

キャビネット内のトリプトンソイブロス寒天落下菌測定プレートによる環境モニタリングを4時間以上行うと、キャビネットの清浄状態を示す優れた指標が得られます。これらのプレート上で3日間培養した後に細菌の増殖が認められないこと、または5日間培養した後に真菌の増殖が認められないことが必要です。

ほとんどの場合、細胞培養にはクラス2キャビネットで十分です。しかし、各研究のハザードリスクを評価しなければならず、既知のウイルス感染や入手元が不明な場合などの追加要因により、より高い封じ込めレベルが必要となる場合があります。

細胞培養バイオセーフティキャビネットの通気パターンの図解

図1.

細胞培養インキュベーター

細胞培養は、厳密に制御された増殖環境で実施する必要があります。温度、湿度、CO2濃度などの正しい増殖条件を制御下で安定的に提供するために、細胞培養インキュベーターは日常的に使用されています。一般には、28℃(昆虫細胞株)~37℃(哺乳類細胞株)の温度範囲で動作し、また必要なCO2濃度(5~10%など)を供給するように設定できます。一部のインキュベーターは、O2濃度を制御する装置も備えています。銅でコーティングされたインキュベーターもあります。銅の微生物阻害活性により、インキュベーター内の微生物汚染のリスクが低減されることが報告されています。また、インキュベーターの水トレイに殺菌剤を入れることで、細菌や真菌の増殖リスクが低下します。しかし、定期的な洗浄と消毒に代わるものはありません。

細胞培養インキュベーター

作業面・床

クリーンな作業環境を維持するために、ベンチトップ、壁、床などのラボの表面は滑らかで洗浄しやすいものでなければなりません。また、防水性があり、さまざまな化学物質(酸、アルカリ、溶剤、消毒薬など)に耐性を示すものである必要があります。液体窒素中での試料保管に使用する区域では、液体窒素がこぼれた場合でも亀裂が生じないような床にする必要があります。さらに、洗浄を容易にしてほこりが溜まりにくくなるよう、床と壁の接続部に曲面の巾木が設置されていなければなりません。窓を密閉し、作業面は快適な作業高に配置する必要があります。

細胞培養用プラスチック製品・消耗品

ほとんどすべての種類の細胞培養容器は、チューブやピペットなどの補助消耗品とともに、シングルユースの滅菌パックとして市販されています。このようなプラスチック製品の使用は、ガラス器具の再利用よりも費用対効果が高く、品質保証水準が高くなり、洗浄および滅菌手順のバリデーションの必要性がなくなります。プラスチック製の組織培養フラスコは通常、付着依存性細胞の付着を促進するために親水性表面を提供するように処理されているか、懸濁液中での細胞の培養に必要な疎水性表面を提供するために未処理のままとなっています。

細胞培養用プラスチック製品・消耗品
細胞培養フラスコHYPERFlask®Stericup®フィルター
ローラーボトルピペット スピナーフラスコ
極低温バイアルマルチウェルプレート培養チューブ
細胞培養プレート遠心分離チューブMillex®シリンジフィルター

ラボ区域の管理・メンテナンス

クリーンで安全な作業環境を維持するために、整頓と清潔が重要です。こぼれたものは直ちに処理する必要があります。定期的に、バイオハザード対策用キャビネットの内側と外側のすべての作業面、床およびその他のすべての機器(例えば、遠心分離機)を70%エタノールで洗浄する必要があります。さらに、細胞および培地のマイコプラズマ汚染の可能性を排除しなければなりません。加湿インキュベーターは、水トレイ内で真菌や細菌が増殖する可能性があるため、特に気を付けるべき場所です。加湿インキュベーターには汚染リスクがありますが、このリスクはインキュベーターの定期的な洗浄によってしか回避できません。すべての主要設備は、以下のように、正規のエンジニアによって定期的にメンテナンスと保守点検が実施される必要があります。

  • バイオセーフティキャビネットは、製品およびユーザー保護の観点から安全に使用できることを確認するため、6か月ごとにメンテナンスと保守点検を実施する必要があります。これらの点検により、空気の流れが適切であること、およびHEPAフィルターが正しく機能していることを確認します。
  • インキュベーターの温度は、定期的にNAMAS(National Accreditation of Measurement and Sampling、英国)または同等の校正済み温度計で確認し、必要に応じて温度を調整する必要があります。
  • インキュベーターのCO2およびO2濃度も定期的にチェックして、濃度が正しく維持されていることを確認する必要があります。
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