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ホームmAbプロセスにおける外来性ウイルス汚染の予防バイオプロセシングにおけるウイルス安全性

バイオプロセシングにおけるウイルス安全性

バイオプロセシングでは、モノクローナル抗体や組換えタンパク質のような治療薬を創り出すために、動物由来の細胞が用いられます。製造テンプレートは細胞培養液によって変わるため、それらは細菌やウイルスによる汚染の影響を受けやすくなっています。医薬品メーカーは、医薬品がこうした汚染物質の影響を受けておらず、患者さんに安全に投与可能であることを保証する必要があります。

この記事では、以下の点について議論します。

ウイルス汚染源はどこにあるのでしょうか?

ウイルス汚染源は数多く存在します。ICH Q5Aガイダンスの文書によると、ウイルス性の汚染物質は以下の2つのカテゴリーに分類されます。

  • セルバンクで見られるウイルス性の汚染物質。内在性ウイルスや潜在ウイルスは、セルバンク(例:レトロウイルス)にも存在しています。それらは、細胞の継代などによって細胞が移行する度に恒常的に発現して伝染していきます。
  • 製造の際にプロセスに侵入するウイルス性の汚染物質について。外来のウイルスとは、製造過程で汚染された原料や作業者の取り扱いの際に侵入するものを指します。

ウイルス汚染のリスクを軽減する

ウイルス安全性は、規制ガイダンス、製造品質システム、適切なプロセス設計を基礎として成り立っています。包括的リスク分析を行うことで、汚染軽減措置の優先順位を定めて、汚染が起きた際の責務の概要を示すロードマップを作成に役立てることが出来ます。

ウイルス汚染のリスクを軽減するために、バイオ医薬品メーカーでは以下のフレームワークを使用します。

  • 防止細胞や原料を慎重に選択してプロセスに侵入する汚染を防止する。
  • 検出ウイルス性汚染物質検出のために原料と中間生成物の包括的な試験を行う
  • 削除ダウンストリーム精製の際に存在し得るウイルスを除去・不活性化する技術の導入

アップストリームのウイルス汚染を防止する

原料の慎重な選択と調達は、それぞれのバイオ医薬品製造プロセスの基礎となります。アップストリームのウイルス安全性に関する規制ガイダンスは、細胞株の特性評価と動物に由来する原料のコントロールに焦点を当てています。原料の選択においては、可能な限り動物由来の製品の代替品を使用すべきです。合成培地は、汚染のリスクを減らし、ロット間の一貫性を高めます。そして、もし動物由来の成分を使用する際には、低リスク の地域から供給された原料か、γ線やUV照射処理がなされたものか、ウイルスの有無について試験が行われたものを使用すべきです。グルコースのような高リスクの構成成分については、高温短時間(high temperature short time:HTST)処理された溶液が、すぐに使用出来る状態で届き、簡便で対象を絞ったリスク軽減ソリューションとなります。

ウイルス安全性については、外来のウイルスや微生物による汚染のリスクを最少にするために、原料だけでなく、作業者への十分な訓練や、シングルユースシステムのような技術、各種細胞培養培地のろ過の選択肢の多様性に依るところが大きくあります。

どの軽減アプローチにもコストがかかるため、汚染が発生した際の潜在的コストと比較して検討すべきです。汚染が発生した際の潜在的コストとしては、いくつかのバッチを廃棄することや、施設の全面的な洗浄、プロセシングの時間的損失、広範囲の調査、レメディエーションの作業などが含まれる可能性があります。汚染の全体的なコストを把握することで、ウイルスのリスク軽減対策によるコスト上昇分の正当性が示される可能性があります。

プロセス全体でウイルス性の汚染物質を検出する

原料の選択と試験は製造プロセスに侵入するウイルス汚染を防止するための鍵となり、また、包括的な細胞株の特性評価により外来ウイルスが無いことが確認されます。マスターセルバンク(Master Cell Bank:MCB)の特性評価では、in vitroとin vivoのウイルス分析における広範な特異性と、内在性レトロウイルスのような特定のウイルスあるいは特定の種類のウイルスの両方を標的とする分析が必要となります。MCB中に存在し得るが検出されないウイルス性の汚染物質について、ワーキングセルバンク(Working Cell Banks:WCB)の試験回数は限定的ですが、生産終了(End-of-production:EOP)細胞は広範囲な試験が行われます。

セルバンクと原料に加えて、バルクハーベストのような鍵となるプロセスの中間生成物も、外来のウイルスや微生物由来の汚染物質について試験を行う必要があります。

場合によっては、従来からある試験法が迅速分子試験法に拡張するか置き換えることが可能です。それにより、プロセス中の原料についてリアルタイムで決定を下すことが可能になり、医薬品製造を加速することになります。例としては、Blazar™プラットフォームや次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing:NGS)が挙げられます。

ダウンストリームのバイオプロセシングの際にウイルス性の汚染物質を除去する

ダウンストリームプロセシングには、目的の分子の品質を高めて濃縮し、不純物やウイルス性の汚染物質から分離するための、一連の段階を通じて浄化されたバルクハーベストの精製も含まれます。こうした精製段階の一部でも、ウイルス性の汚染物質を除去あるいは不活性化されます。

タンパク質 A精製クロマトグラフィーは、通常、mAb ダウンストリーム精製の第一段階です。この段階では、タンパク質 A樹脂は、他の不純物を流しつつ、抗体や組換えタンパク質を精製します。結合した物質は、そのため、非共有結合を切ることで溶出されます。この単一の段階で、比較的純度の高い製品が得られ、多くの場合、ウイルスクリアランスに関する評価を受けます。

数多くのモダリティのダウンストリームプロセシングにおけるウイルスの不活性化と最終精製段階は、ある程度のレベルのウイルスクリアランスをもたらします。低pH、界面活性剤、熱への曝露は、一般的に、エンベロープウイルス性の汚染物質の不活性化に用いられます。イオン交換クロマトグラフィーによる最終精製段階では、さまざまなプロセスや製品に関連した不純物が除去され、エンベロープウイルスと非エンベロープウイルスの両方が除去されます。

ウイルスろ過は、モノクローナル抗体や組換えタンパク質のウイルス安全性確保において中心的役割を果たし、サイズ排除に基づいたウイルス滞留による堅固なプロセシング段階であると捉えられています。タンパク質 凝集体のような不純物は、ウイルスフィルターが早期に汚損する原因となることがありますが、多くの場合吸着性の予備的ろ過によって影響を軽減することが可能です。

ウイルスクリアランス試験―ダウンストリームのバイオプロセシングでウイルス性の汚染物質が除去されることを確認する

ウイルスクリアランス調査は、個々のプロセス 段階のクリアランス能力を評価し、低pH保持のようなウイルスを不活性化する段階や、クロマトグラフィーによる分離やウイルスろ過のような潜在的なウイルス性の汚染物質を除去する段階に焦点を当てます。

クリアランス調査を行う前に、フルスケール プロセスのスケールダウンモデルを開発し、異なるスケールでプロセスパラメーターと 出力結果の比較を行うことでその性能を確認する必要があります。もし結果が連動していることが示された場合は、小スケールプロセスのウイルスクリアランス 能力は、大スケールプロセスのクリアランス能力を予測するものとして捉えることも可能です。

クリアランス能力の検証のための要件は、規制ガイドラインと臨床開発の段階によって変わります。第I相試験の前に、内在性レトロウイルスのモデルとなるマウス白血病ウイルス(Murine Leukemia Virus:MuLV)のようなエンベロープウイルスと、小さな非エンベロープウイルス〔通常、マウス微小 ウイルス(minute virus of mice :MMV)のようなパルボウイルス〕を用いた調査が行われます。これらのウイルスのクリアランスは、それぞれがウイルス 削減の補完的メカニズムを備えた限られた数のプロセス段階で評価されます。臨床開発の後期かつ承認申請の前に、ウイルスの専門家グループとともに、多数のプロセス段階について一連のプロセシング条件下で包括的な調査が行われます。こうした後期の調査では、最悪条件下のウイルスクリアランスについて、プロセシングパラメーターの範囲内で各プロセス段階について評価が行われます。

クリアランス調査の結果を理解することで、製品のウイルス安全性関連で、リスクに基づいた決定を行う際に有用な情報が得られます。

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バイオプロセシングの際のウイルス安全性に関する課題解決に向けたさらなる詳細は、当社のウイルス安全性電子ハンドブックをダウンロードしてご覧下さい。この電子ハンドブックは、こうした生物学的製剤を患者さんに安全に投与可能であることを保証するための重要なアプローチのそれぞれについて情報を提供し、ウイルス汚染の防止、ウイルス汚染の検出、ダウンストリームのバイオプロセシングにおいてウイルスを除去すること、に関する節も設けられています。

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