単分散ポリマー球の調製
Melissa A. Fierke
University of Minnesota
Material Matters, 2008, Vol.3. No.1
コロイド結晶鋳型として使用する、界面活性剤を含まない単分散ポリマー球は、比較的多くの量を簡単に得ることができます。乳化剤を含まない乳化重合法による、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびポリスチレン(PS)の一般的な合成方法を以下に示します。この方法で直径数百ナノメートルの球が得られます。球の粒径は撹拌速度、モノマー濃度、反応温度、開始剤の量を変更することで調整可能です。以下に説明するどちらの場合も、反応は四口丸底フラスコに電動スターラー(撹拌子はテフロン製)、水冷却器、窒素ガスボンベに接続したピペット、熱電対プローブをセットしたもので行います(図1a)。
図1(a)単分散ポリマー球合成用反応装置の写真。反応装置の主な構成部品の一覧については製品表をご覧ください。(b)試薬(フリーラジカル開始剤など)を反応系に加える際はシリンジを使用し、反応装置内の窒素雰囲気を維持します。(c)面心立方構造で充填された複数層の単分散PMMA球からなる、典型的なPMMAコロイド結晶のSEM写真。この写真では、この種のコロイド結晶にしばしば見られる点状や線状の欠陥までも観察できます。
PMMA球を合成するには、1600 mLの脱イオン水と400 mLのメタクリル酸メチル (M55909)モノマーをフラスコに加えます。混合物を約350 rpmで撹拌しながら窒素を吹き込みます。70℃まで加熱し、系を平衡状態とします。温度が安定したら、開始剤として1.50 gの2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(440914)を約25 mLの脱イオン水に溶解し、フラスコに加えます(図1b)。数分以内にフラスコ内容物は乳白色となります。反応の過程(1~2時間)で、温度が70℃に戻る前に数℃上昇します。これが反応終了の合図です。
PS球の合成もほぼ同様に行います。1700 mLの脱イオン水をフラスコに入れて、約350 rpmで撹拌しながら70℃まで加熱します。温度が安定したら、200 mLの洗浄済みスチレン(240869)を加えて、温度が平衡状態となるのを待ちます。次いで、開始剤として0.663 gの過硫酸カリウム(379824)を100 mLの水に溶解し、70℃に加熱後にフラスコに加えます。温度を一定に保ち、混合物の撹拌を28時間続けます。
重合反応が終了したら、ポリマー球を含む溶液をガラスウールで濾過して大きな凝集物を溶液から取り除きます。その後、「形状から機能へ:コロイド結晶鋳型法による3次元的な多孔質材料の構築」で説明した方法を用いてポリマー球を規則的に配列させてコロイド結晶(図1c)にします。コロイド結晶鋳型を作製後、以下の前駆体材料を鋳型の空隙に浸透させます。最終的に固体生成物に変換後にコロイド球を除去することで、3次元多孔質材料が得られます、
ゾル-ゲル前駆体
アルコキシド、アセチルアセトナート(acac)、酢酸系の前駆体を用いたゾル-ゲル化学は、3次元構造をもつ金属酸化物材料を構築する便利な手法です。この方法は、主要なナノパターニング/マイクロパターニング技術のすべてに適用できるという点でも、また周期表全体にわたる種々の前駆体に利用可能であるという点でも汎用性が高いものです。例えば、チタンブトキシド(244112)は酢酸バリウム(255912) )または酢酸鉛(398845)と組み合わせることで、圧電性を有するBaTiO3およびPbTiO3を作製することができます。1,2
シュウ酸塩
金属塩の鋳型成長法は、従来のゾル-ゲル化学に代わる3次元構造材料合成法です。シュウ酸塩の一般構造はMx(C2O4)yで、シュウ酸塩は熱分解すると反応条件に応じて構造的な金属酸化物、炭酸塩、金属のいずれかとなり、反応副産物として気体(COまたはCO2)が生じます。3-6 金属酢酸塩の水和物もシュウ酸溶液で処理すれば鋳型法のプロセス中にin-situで各金属シュウ酸塩に変換させることができます。7
参考文献
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