PEG(ポリエチレングリコール)には、水への溶解度が大きい、溶液中での移動度が大きい、毒性や変異原性がない、すみやかに代謝される、FDAの認可を取得しているなど、数多くのメリットがあります。ペプチド、抗体フラグメント、酵素などの生物学的に活性な物質もしくは低分子をポリエチレングリコール鎖で化学修飾すること(PEGylation、PEG化)は、特定の用途に応じた性質を分子に付与するために効果的です(図1)。このコンジュゲートのPEG部分は水溶性、生体適合性、柔軟性などをもたらします。
図1PEG化
特に医薬品はPEG化の恩恵を受けやすく、PEG修飾医薬品の上市数が継続的に増加しています。血中半減期は新薬の成功の鍵となる重要な要素であり、非ペプチド分子からペプチド、タンパク質にいたる有望な新薬候補化合物に、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を修飾して血中半減期を延長することは、大きな利点があります。タンパク質やペプチドの分子量を大きくしたり、タンパク質分解酵素から遮蔽することによって、PEG修飾は薬物動態を改善します1。PEGの長さとリンカーを正しく選択することにより、医薬品の溶解性と生体内での分布を高めることが可能です2。1991年に最初の治療用のPEG-タンパク質コンジュゲート(PEG-アデノシンデアミナーゼ、PEGADA)がFDAに認可されてから、各種PEG化タンパク質による様々な疾患の治療が数多く報告されています。
薬物輸送におけるPEGポリマーの利用については、非常に多くの報告があります3-6。最近の報告では、PEG修飾はナノキャリアーシステムや微粒子の薬物輸送を高める手段として論じられています7,8。
また、PEG-酵素複合体は疎水性有機溶媒中で酵素の可溶性、安定性、活性を高めることから、ライフサイエンスでの応用が見出されています。その他、固相ペプチド合成(SPPS)用グラフトポリマー担持体の作製や標的指向性ポリマー製剤の合成、バイオリアクター用PEG-補因子付加体の作製など、PEGは幅広い分野で応用されています。
参考文献
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